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ブレイクインを考える

2004.11.6 GP-touringu_TENGOKU from Bannnosuke

<序章>

先日Gさんのエンジンが壊れた。

Gさんは甘くしてるのになんで壊れたのか分からないと分解したエンジンをしげしげと眺めながら悩んでいた。しばらくして「たぶんブレークインが悪かったのかもしれない」とポツリ。

小生の診断ではそうではなく、甘すぎるニードルで走りつづけていたことで「ケッチン」を起こしたのではないかと思います。

「ケッチン」とはもう死語になってしまって聞いたことが無いと思いますがノッキングのような物で、ピストンの上下に対して1次側からピストンの動作と相反する力が強くかかってしまったためにコンロッドが折れてしまったものだと思うのです。

小生はそう判断しましたがGさんはブレークインが原因と譲らなかったという場面がありました。そこで、今回はRCのブレークインに付いて少し詳しく書いてみようと思います。

<現在のブレークイン>

ブレークインとは言うまでもなくエンジンの慣らし運転のことですが、エンジンの箱に入っている取り説には走行しながらやるように書いてあります。私の見る限りでは全ての人がこの方法でやっているようです。

しかし、これでうまくいく場合と、いかない場合とがあります。取り説通りやったのに調子が悪かったり、寿命が妙に短かったりしているのを見るにつけ、小生はあのブレークインでほんとにいいのだろうかといつも思っています。確かに現在のエンジンの加工技術は相当なものでメーカーの取り説からはブレークインすらしなくても良いような自信も見受けられます。

<RCエンジンとF1エンジン>

RCのエンジンのテクニカルデータを実車のエンジンに対比させると分かりますが、とんでもない高性能なエンジンということがわかます。

わずか1cc足らずの排気量で1馬力以上を出すのが現在のRCエンジンです。これを実車の排気量に換算すると3000ccのF1エンジンが2500馬力を出すことになるのです。

中嶋悟がF1で乗っていた1500ccのターボエンジンでも最高で1200馬力だったのを考えるとRCエンジンはどれだけとんでもない代物かがわかるというものです。

では、F1のエンジンも走行しながらブレークインをやっているのでしょうか。私だけかもしれませんが聞いたことがありません。公開してないので分かりませんが、おそらく工場の専用ベンチで無負荷の状態で綿密なブレークインをしていると思います

<完ぺきなブレークイン>

完ぺきかどうかは知れませんが、F1同様RCのエンジンも無負荷の状態でブレークインする必要があると小生は信じています。

何故かと言うとブレークインとはピストンとスリーブだけのスリ合わせではないからです。クランクシャフトとベアリング、コンロット上下の軸受けメタルとそれに通るシャフト、それらが発熱により膨張するエンジンブロックとの兼ね合いなど、稼動部だけでなくエンジン全ての慣らしがブレークインだと考えています。走行しながらのブレークインのように不安定な負荷がかかりつづけるやり方では、エンジンに良い訳がなくとても小生はやる気にはならないのです。

という訳で小生のブレークインは80%は走行前に無負荷でやるのです。

走行しながらやるのは最後の仕上げとしての残りの20%に限っています。このやり方は小生が考えたことではなく、小生が30年程前、始めて飛行機を始めたころ、95歳で10年程前に亡くなったラジコン界の草分け的な方に教わったやり方を小生なりに現代のエンジンに合わせてアレンジしたやりかたです。昔の粗悪とは言いませんが仕上げが不安定なエンジンをどうしたら本来の性能を引き出せるかと言うことからこのやり方が考案された物と思われますが、現在の高性能を考えると、「今も」と言うより「今だから」こそ、このブレークインはよりテクニカルデータ通りの性能を引き出すのに役立つのではないかと思えるのです

<小生のブレークイン>

ブレークインの説明をする前に、このやり方でブレークインするとどのようなエンジンになるかということを話しておきましょう。

  1. 非常に安定したスロー回転が得られる。(小生のエンジンは5分間のスローの後、いきなり全開にしても一気に吹けあがります。もちろんスローニードルが適切に調整できてることが前提です)
  2. 最高回転域が同じ他のエンジンより回る。
  3. エンジンの寿命が長くなる。
  4. 壊れにくいエンジンになる。

・ 上記は、あくまでもニードルが適正に調整されていることが前提で、絞りすぎたり甘すぎではなんにもなりません。

・ 加えて、上記はあくまでも主観的なもので、外国製を含めて全てのエンジンがこうなるとは限りませんので盲信はしないで下さい。

では、小生のブレークインを順を追って公開します。

  1. エンジンを車にしっかり据え付ける。
    このときクラッチベルのギアはスパーギアが回らないようには離してエンジンを装着する。タイヤもつけないでシャーシーを角材などの上に置く。
  2. スロットルを15%ほど開け、ニードルを締め切ったところから2回転もどしてエンジンを始動。
    (締める時はニードルの先端に傷がつかないよう静かに締め込みながら止まった所ですぐ止めます。決して力を入れて閉めないことが大事です)
  3. スロットルを少し開ける。回転が上がるのでニードルを前の回転になるまで開ける。(甘くする)再びスロットルを開けニードルも開ける。これをスロットルが全開になるまで繰り返して、全開で回転がスローの状態にする。このままタンクが空になるまで回し続ける。
    (この作業は、エンジン全体にオイルを十分染み込ませるのが目的です)
  4. 燃料が切れてエンジンが止まったらニードルを2回転に戻し、エンジンを再び始動する。今度も3のように全開でのスローにする。全開スローになったらニードルを少し絞って回転を上げ、エンジンヘットを手で触ってみる。すこし熱くなったらニードルを緩めてスローにしてヘットを冷やす。冷えたら再び先ほどの回転まで絞る。
    (ヘットは絶対に手で触れないほど熱くしないようにしてください。また、回転が上がると車が振動で動くので手でおさえます)
  5. 4の作業で徐々にニードルの絞りを増やしていく。ニードルが1.5回転ぐらいで、回転がかなり高くなるまで(全開でストレートを走っているような音)には5~10タンク目ぐらいが目安。
  6. 一度エンジンを止めてヘットを完全に冷えるのを待って再度始動。今度はニードル1.5回転ぐらいでスロットルは60%開ける。かなりの回転になるがそのままヘットに手を添えて熱くなる(ここでは手でさわれないぐらい)まで回し続ける。ヘットが熱くなったらスロットル(今度はニードルではない)を閉めてスローにしてヘットを冷やす。
    (これは1タンクでOKです。この作業は中域回転のブレークインです)
  7. 次に最高回転のブレークインに移ります。たぶん最高回転のブレークインなど聞いたことは無いと思いますが、実は公表はしてませんが全日本選手権や国際レベルのエンジンはエキスパートに渡る前に必ずやっているようです。これをやることでエンジンの伸びはかなり違ってくるのです。まず、4の状態で全開スローまで持っていき、全開スローになったらスロットル全開のままニードルを絞って高回転にする。このときの回転音はちょっと怖いかもしれませんが3~4秒ぐらい回したらニードルをスローになるまで開けてエンジンを冷やす。冷えたら又絞って先ほどよりも高い回転まで絞る。また3秒ぐらい回したらニードルを戻す。これを繰り返して回転音が澄んだ音でピーとなるところがこのエンジンの限界です。このピーで3秒を3回ぐらい繰り返し、スローに戻してエンジンが冷えたら停止する。
    これで無負荷のブレークインは終了です。
  8. 仕上げに、ニードル2.5回で2タンク走行します。
    その後ニードルをストレートで失速するまで絞っていき、失速したニードル位置から10分ほど戻した所(少し甘め)で1リッターほど走行します。それが終ったら、やっとレースモードのニードル位置にします。レースモードのニードルは失速から3分~5分戻たところです。この少し戻すのがミソで、小生はエンジンの温度はあまり気にしないでこのニードル位置で走行させますがオーバーヒートで壊れたり甘すぎてふけ上がらないという事はほとんどありません。しかし、この位置は気温や湿度で変わりますから走行ごとに調整するのはもちろんです。

注1)ブレークイン中で、ヘットに触れるということは終始手のひらをヘットに当てていることです。

注2)文章では説明しにくいところが結構ありまして、分からないところが多々あるかと思いますがご容赦ください。

付録)プラグもブレークインが必要なこともあまり知られていないようです。新品のプラグがもっとも良いのではなく、2タンクほど走ってフィラメントが白く変色したところが最も燃焼効率がいいのです。全日本クラスのエキスパートは決して新品は使わないそうです。

<後述>

この記事を書いた後、予想外の反響があって少し驚いています。

このような前時代的なことが受け入れられるとは思っていなかったからです。このやり方をやってみようなどと思う人はいないと思っていたのですが、以外にもそうでもないようなのでもう少し書き加えることにしました。

まず第1に、最終の高速回転は長くても5秒以上は絶対に回さないで頂きたいことです。

エンジンの冷却は燃料とシャシーへの熱伝導だけなので、一気に高温に達します。ゆえにこれ以上回したら壊れる恐れがかなり高いからです。

空冷ファンをつけてやれば良いのでは、という意見が聞こえてきそうですが、ファンのベルトが追いつけず切れてしまうかもしれません。そして、切れたベルトがエンジンに巻きついて止まったりしたら、高温のままで急に停止させられた影響で、それまでのブレークインは無駄になってしい、そのエンジンは使い物にならなくなります。という訳で空冷ファンは使わない方が賢明です。もっと言えば、テストベンチに固定してプロペラを付けた(カー用エンジンには付かない)としてもヘッドの熱は一気に上がりますので、やはり2~3秒で回転を落とします。

もう一つ、面倒がってスパーギアをかみ合わせたままで回せば、間違いなくスパーは舐めてしまいます。 

第2に、急ぐあまり途中を飛ばして一気に最後の高速回転に持っていったときです。この場合は2~3秒でも壊れる確率は非常に高くなります。壊れなくてもその後の結果はスカタンエンジンになるでしょう。 

第3に、3の全開スローを3タンクや4タンクもしないことです。現在のエンジンは精度が非常に高いですから全く無意味なことをやっているに等しいからです。

そのやり方は、小生が飛行機をやり始めた30年前以前のやり方です。昔のエンジンのように精度が不安だった時は19クラスのエンジンを全開スローで2リッターぐらい回したものでした。

平成20年5月12日(月)

Bannosukeさんにラジ助から何点か質問をさせていただきました。

<1.ブレイクイン中に負荷をかけることの意義>

私の場合、基本的に負荷をかけないやり方です。はじめから負荷をかける(走行)やり方では完璧な磨り合わせができないと考えるからです。負荷をかけるのは、仕上げのときです。私の考えでは、負荷をかけて(走行)のブレークインはエンジンよりも駆動形のブレークインと考えています。

★飛行機用の場合はプロペラを付けますが、これは冷却用です。

<2.ブレイクイン中の温度管理>

高速回転以外のときは、指でさわれる程度です(大まかですが45度ぐらいでしょうか)。仕上げの高速回転では、絶えず指でさわってみて、さわれないほどの温度にはならないようにします。つまり、熱くてさわれない温度になったらニードルを戻すということです。(温度を測りながらやったことがないのであしからず)

<3.ブレイクインによりエンジンの性格(トルク型など)味付けすることが可能か>

たぶん可能だと思いますが、私の経験では、高速型にしかできませんでした。と言うより、私のブレークインはそのエンジンの回転能力をできるだけ引き出すやり方だと思います。トルク型ということは、シリンダーのボアとピストンのストロークが大きくかかわりますので難しいのではないかと思います。

<4.エンジンの寿命を判断するポイント>

これは圧縮が落ちてきたときでしょう。エンジンはやたらと回っているのにトルクが落ちてきたときです。

(まるでエンジンが空回りしているように感じます)

2008/05/12

注記

「ブレイクインを考える」のコラムは4年前から掲載させていただき、ブレイクインを考える一つの材料にしていただいております。基本的には京商GS15Rを想定して書かれています。そして、Bannosuke氏の30年近いGPの経験から編み出した方法となります。

本方法は純粋に「ピストンとスリーブおよびエンジン内各部分を、均質的に仕上げる」ことを目的とし、80%をベンチの上で管理しています。今のエンジンは精度も高くなり、ここまで入念なブレイクインは必要なくなった感もありますが、ブレイクインによりその後のエンジンの性質が変わるという考えは否定できないところであります。基本的にはエンジンの取り扱い説明書に従いブレイクインを行えば、規定された回転数、出力を生み出すこととなりますので、あまり凝ったブレイクインをすることは不要かと思いますが、文字通り「ブレイクインを考える」という意味で、お読みいただければ幸いです。

ランニングブレイクインであれば、回転数を上げすぎる危険性は少ないですが、ベンチのブレイクインの場合、何らかのきっかけで「過回転」を起こす可能性があり、エンジンの破損の可能性がありますので、実施される場合には、回りすぎに注意の上、万一回りすぎた場合は排気口をふさぐなどしてすぐにエンジンを止めて下さい。ラジ助

2010/07/10

注記:2

この記事が書かれた頃にゴムツーリングで一線で使われていたGS15Rエンジンの頃は、ブレイクインがその後の特性に与えた影響はかなり大きかったと感じましたが、現在のGXR15エンジンになってからは、私の主観的にはさほどどのようなブレイクインをしたとしても大きく違いは感じなくなりました。

無負荷でのブレイクインもサーキットでは当たり前のように見られるようになり、その方法もかなりシンプルに行われているようです。

しかし、あまり意味を持たなくなったように感じるブレイクインも、エンジン模型を走らせる上では大事にしたい行程の一つであることに違いはありません。bannosukeさんが言われていたのを思い出しますが、『エンジンが楽しているように感じさせながら、いつの間にか速く回されているように作り上げる』のが理想と言っていました。ある意味エンジンを「騙す」ようなやり方なのかな・・と思います。だから、最初はやはり甘めに、そして全開にしないようにゆっくり走らせながら、ある程度時間をかけてやるということも必要なのかな・・と思います。

bannosukeさんは30年前の模型エンジンから悪戦苦闘して、それこそ一日中エンジンがかからないとかそういうこともあった時代があり、また空ものも長く続けてきたからこそ、上記のような自分の仮説に基づいた一つの方法を編み出したのだと思います。

※2004.11.9校正・2004.11.11再校正/2005.9.16注記 /2006.11.10TZ-T5投稿文追加/2008.5.11ノーベンチブレイクイン追記/2008.5.11Bannosukeさんに質問事項追記 2010.7.10再々校正